- 2025年11月22日
走行距離課税の導入が検討され、運送業界からは悲鳴が上がっています。本当に運送業はピンチなのでしょうか?
少なくとも中小零細、個人の軽貨物運送業などは死活問題と言えるでしょう。
この記事でわかること
✔ 走行距離課税とは?制度の概要と導入の背景
✔ 走行距離課税導入による運送業への影響
✔ 運送業界が生き残るための対策
✔ 新たなビジネスモデルの構築
この記事では、走行距離課税の導入による運送業界への影響を徹底的に解説し、将来的な展望を探ります。最後まで読むことで走行距離課税が導入される事での日本経済そのものへの影響などわかります。
>>>この記事の執筆者「下剋上軍師」の詳細

走行距離課税とは?制度の概要と導入の背景

✅ 走行距離課税の基本的な仕組み
✅ 導入の背景にある環境問題と財源確保
✅ 海外の走行距離課税事例
走行距離課税に関しては10年以上前から、浮上してきては消えてを数回繰り返しています。そもそも走行距離課税とは何なのか?そして導入されようとしている背景を解説します。
走行距離課税の基本的な仕組み
走行距離課税とは、車両の走行距離に応じて課税される制度です。
従来の自動車重量税や自動車税は、車両の保有に対して課税されるのに対し走行距離課税は実際に道路を利用した距離に応じて課税される点が大きく異なります。
この制度は、走行距離が長い車両ほど道路への負担が大きいという考え方に基づいており、道路の維持・補修費用を公平に負担する目的があります。
具体的には、車両に搭載されたGPSなどの装置で走行距離を記録し、その記録に基づいて課税額が算出される仕組みが想定されています。
税率は、走行距離1キロメートルあたり〇〇円といった形で設定され、車種や車両重量、環境性能などに応じて税率が調整されることもあります。
従来の税制では、車両を保有しているだけで税金が発生するため走行距離が短い車両も一定の税負担を強いられていました。
走行距離課税は、走行距離に応じて課税されるため走行距離が短い車両の税負担を軽減し走行距離が長い車両の税負担を増加させる効果があります。
これにより、道路の利用状況に応じた公平な税負担が実現すると期待されています。
導入の背景にある環境問題と財源確保
走行距離課税の導入背景には、環境問題への対応と道路財源の確保という2つの大きな目的があります。
地球温暖化対策として、自動車の走行による二酸化炭素(CO2)排出量削減が求められています。
走行距離課税を導入することで、走行距離が長い車両の利用を抑制しCO2排出量削減につなげることが期待されています。
また、電気自動車(EV)や燃料電池自動車(FCV)など、環境性能に優れた車両の普及が進むと、従来の自動車重量税や自動車税といった税収が減少する可能性があります。
走行距離課税は、車両の環境性能に関わらず、走行距離に応じて課税されるため環境性能に優れた車両の普及が進んでも一定の税収を確保することができます。
道路の老朽化が進み、維持・補修費用が増加しています。走行距離課税は、道路の利用状況に応じて課税されるため道路の維持・補修費用の財源として活用することができます。
環境問題への対応と道路財源の確保という2つの目的を達成するために走行距離課税の導入が検討されています。
海外の走行距離課税事例
走行距離課税は、すでに海外の一部の国や地域で導入されています。
例えば、ドイツでは、12トン以上のトラックに対して走行距離と車両の排出ガス基準に応じて課税される制度が導入されています。
この制度は道路の維持・補修費用の財源確保と環境負荷の低減を目的としています。
またスイスでは、すべてのトラックに対して走行距離と車両重量に応じて課税される制度が導入されています。この制度は、鉄道輸送への転換を促進し道路の混雑緩和を目的としています。
アメリカの一部の州でも、走行距離課税の導入に向けた実証実験が行われています。
これらの実証実験では、GPSなどの技術を活用して走行距離を記録し、課税額を算出する仕組みが検討されています。
海外の事例から、走行距離課税の導入には道路財源の確保、環境負荷の低減、交通政策の推進など様々な目的があることがわかります。
日本で走行距離課税を導入する際には、海外の事例を参考にしながら日本の実情に合わせた制度設計を行う必要があります。
走行距離課税導入による運送業への影響

✅ 中小運送業者の経営圧迫
✅ 物流コストの増加と価格転嫁の難しさ
✅ ドライバーの労働環境への影響
走行距離課税導入で庶民はもちろん影響しますが、一番影響を受けるのは社会のインフラでもある運送業です。具体的にどの様な影響があるのかをそれぞれ解説します。
中小運送業者の経営圧迫
走行距離課税が導入された場合、中小運送業者は経営面で大きな影響を受ける可能性があります。
燃料価格の高騰に加え、走行距離に応じた税負担が加わることで中小運送業者の経営を圧迫する要因となることが懸念されます。
中小運送業者は、大手運送業者と比較して、一般的に資金力や経営資源が限られています。そのため、新たな税負担に対応するための資金繰りが困難になる可能性があります。
また、中小運送業者は、大手運送業者と比較して車両の燃費改善や運行ルートの最適化といった業務効率化の取り組みが遅れている場合があります。
そのため、走行距離課税による税負担を軽減するための対策が十分に講じられず、経営が悪化する可能性があります。
さらに、中小運送業者は大手運送業者と比較して荷主企業との価格交渉力が弱い傾向があります。そのため、走行距離課税によるコスト増加を運賃に転嫁することが難しく自社で負担せざるを得ない状況に陥る可能性があります。
これらの要因が重なることで、中小運送業者は経営難に陥り、廃業を余儀なくされるケースも出てくる可能性があります。
物流コストの増加と価格転嫁の難しさ
走行距離課税の導入は、運送業全体の物流コスト増加につながる可能性があります。
走行距離に応じて課税されるため、長距離輸送を行う運送業者ほど税負担が大きくなります。
物流コストの増加は、荷主企業にも影響を及ぼします。荷主企業は、運送業者からの運賃値上げ要請を受けることになり、製品やサービスの価格に転嫁せざるを得なくなる可能性があります。
しかし、価格転嫁は容易ではありません。競争の激しい市場においては価格を上げることが難しく荷主企業はコスト増加を自社で負担せざるを得ない場合があります。
また、荷主企業は、物流コストを削減するために運送業者との価格交渉を強化する可能性があります。
その結果、運送業者は利益を圧迫され、経営が苦しくなる可能性があります。
特に、中小運送業者は荷主企業との価格交渉力が弱いためコスト増加を運賃に転嫁することが難しく経営が悪化する可能性があります。
ドライバーの労働環境への影響
走行距離課税の導入は、ドライバーの労働環境にも影響を与える可能性があります。運送業者がコスト削減のために、ドライバーの労働時間や賃金を削減する可能性があります。
例えば、運送業者は、ドライバーの走行距離を短縮するために、無理な運行スケジュールを組む可能性があります。
その結果、ドライバーは、長時間労働や過労運転を強いられることになり健康を害するリスクが高まります。
また、運送業者はドライバーの賃金を削減するために基本給を減額したり残業代を支払わなかったりする可能性があります。
その結果、ドライバーの収入が減少し生活が苦しくなる可能性があります。
さらに、運送業者はコスト削減のために安全管理を疎かにする可能性があります。その結果、交通事故のリスクが高まりドライバーの安全が脅かされる可能性があります。
これらの要因が重なることで、ドライバーの労働環境が悪化し運送業界の人手不足が深刻化する可能性があります。
運送業界が生き残るための対策

✅ 業務効率化とコスト削減
✅ 新たなビジネスモデルの構築
✅ 荷主企業との連携強化
走行距離課税の導入で運送業界は確実に影響を受けますので、何としてでも生き残るため対策が必要となります。
業務効率化とコスト削減
走行距離課税導入後も運送業界が生き残るためには、徹底的な業務効率化とコスト削減が不可欠です。まず、運行ルートの最適化が重要になります。
AIやビッグデータを活用し、最適なルートを算出し無駄な走行距離を削減することで、燃料消費量と走行距離課税による税負担を軽減することができます。
次に、車両の燃費改善が求められます。低燃費車両の導入やエコドライブの徹底により燃料消費量を削減することができます。
また、デジタル技術の活用も有効です。TMS(輸配送管理システム)やデジタルタコグラフを導入し、運行状況をリアルタイムで把握し、効率的な運行管理を行うことができます。
さらに、事務作業の効率化も重要です。RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)を導入し、請求書発行や経費精算などの定型業務を自動化することで人件費を削減することができます。
これらの業務効率化とコスト削減策を組み合わせることで、走行距離課税による負担を軽減し経営体質を強化することができます。
新たなビジネスモデルの構築
走行距離課税導入を機に、従来のビジネスモデルを見直し新たなビジネスモデルを構築することも重要です。
例えば、共同配送が挙げられます。複数の運送業者が連携し共同で配送を行うことで積載率を向上させ走行距離を削減することができます。
また、積み合わせ輸送も有効です。複数の荷主の荷物を積み合わせて輸送することで、積載率を向上させ走行距離を削減することができます。
さらに、ラストワンマイル配送に特化するビジネスモデルも考えられます。
地域の特性に合わせた配送方法を開発し、地域住民のニーズに応えることで競争優位性を確立することができます。また、ドローン配送や自動運転トラックなどの新たな技術を活用したビジネスモデルも、将来的に有望です。
これらの新たなビジネスモデルを構築することで、走行距離課税による影響を軽減し新たな収益源を確保することができます。
荷主企業との連携強化
走行距離課税導入後も運送業が生き残るためには、荷主企業との連携強化が不可欠です。
まず、運送コストの透明化が重要になります。運送コストの内訳を明確にし、荷主企業に理解してもらうことで適正な運賃交渉を行うことができます。
次に、共同でのコスト削減が求められます。荷主企業と運送業者が協力し、物流プロセス全体を見直し無駄なコストを削減することができます。
例えば、納品時間の調整やパレットの共通利用など、様々な取り組みが考えられます。
また、サプライチェーン全体の最適化も重要です。荷主企業と運送業者が情報を共有し需要予測や在庫管理を最適化することで物流コストを削減することができます。
さらに、長期的なパートナーシップの構築も有効です。荷主企業と運送業者が信頼関係を築き、互いに協力し合うことで持続可能な物流システムを構築することができます。
これらの荷主企業との連携強化を通じて、走行距離課税による影響を軽減しwin-winの関係を築くことが重要です。
走行距離課税導入後の運送業界の展望

✅ 業界再編と淘汰の加速
✅ 環境負荷低減に向けた取り組みの加速
✅ 新たな物流システムの構築
走行距離課税導入で運送業界はどの様に変化していくかについて解説します。
業界再編と淘汰の加速
走行距離課税の導入は、運送業界の競争激化を招き業界再編と淘汰を加速させる可能性があります。
走行距離課税により、運送コストが増加するため経営体力のない中小運送業者は価格競争で不利になり、淘汰される可能性があります。
また、大手運送業者は、M&A(合併・買収)などを通じて、事業規模を拡大し競争力を強化する可能性があります。
その結果、運送業界は大手運送業者による寡占化が進む可能性があります。
中小運送業者は、生き残るためには他社との連携やニッチな市場への参入など独自の戦略を打ち出す必要があります。
また、行政による支援も重要です。中小運送業者向けの経営консультацииや、資金援助などを実施することで中小運送業者の経営を支援する必要があります。
環境負荷低減に向けた取り組みの加速
走行距離課税の導入は、運送業界における環境負荷低減に向けた取り組みを加速させる可能性があります。
走行距離課税は、走行距離に応じて課税されるため、運送業者は走行距離を短縮するために様々な取り組みを行うことが予想されます。
例えば、電気自動車(EV)トラックの導入やバイオ燃料の利用などが考えられます。また、モーダルシフトを推進し鉄道や船舶輸送への転換を図ることも有効です。
さらに、共同配送や積み合わせ輸送を推進することで、車両の積載率を向上させ走行距離を削減することができます。
これらの取り組みを通じて、運送業界はCO2排出量を削減し、環境負荷を低減することができます。
環境負荷低減は、企業の社会的責任(CSR)を果たすだけでなく企業のブランドイメージ向上にもつながります。
新たな物流システムの構築
走行距離課税の導入は、新たな物流システムの構築を促す可能性があります。
走行距離課税により、運送コストが増加するため運送業者はコスト削減のために新たな技術やシステムを導入することが予想されます。
例えば、ドローン配送や自動運転トラックなどが考えられます。ドローン配送は都市部におけるラストワンマイル配送の効率化に貢献する可能性があります。
自動運転トラックは、長距離輸送における人件費削減に貢献する可能性があります。
また、AIやIoTを活用した高度な運行管理システムも物流効率化に貢献する可能性があります。
これらの新たな物流システムは、走行距離課税による影響を軽減するだけでなく、物流業界全体の生産性向上にもつながります。
まとめ:走行距離課税は運送業界の変革を促すか
走行距離課税は、運送業界に大きな変革をもたらす可能性を秘めています。
短期的には、コスト増加による中小運送業者の経営圧迫や、ドライバーの労働環境悪化といった課題が予想されます。
しかし、長期的には、業務効率化、コスト削減、新たなビジネスモデルの構築などを通じて、運送業界全体の体質強化につながる可能性があります。
また、環境負荷低減に向けた取り組みや、新たな物流システムの構築を加速させることで、持続可能な物流システムの構築にも貢献する可能性があります。
走行距離課税は、中小運送業者はピンチになると同時に大手運送業界にとってチャンスでもあります。
運送業界全体で変革を進め、持続可能な物流システムを構築していくことが求められます。
そのためには、行政、運送業者、荷主企業が連携し、それぞれの役割を果たすことが重要です。行政は、中小運送業者向けの支援策を充実させるとともに環境負荷低減に向けた規制緩和や新たな物流システムの導入を支援する必要があります。
運送業者は、業務効率化やコスト削減に努めるとともに新たなビジネスモデルの構築や環境負荷低減に向けた取り組みを積極的に行う必要があります。
荷主企業は、運送コストの透明化に協力するとともに共同でのコスト削減や、サプライチェーン全体の最適化に協力する必要があります。
